ロマンチック遊戯
放送作家・西野直樹の、アンティーク、ノスタルジー、幻想、フレンチ雑貨、散歩、和のこころ、大正ロマン、昭和レトロ、旅、絵本、猫、乙女スポット、カフェ、アート、そんな日々。
02.03.Wed 早川良雄 ―“顔”と“形状”―
先日は「ジョナサンでも分かるアート」の取材で
竹橋の東京国立近代美術館で開催中の
『早川良雄 ―“顔”と“形状”―』へ。
(放送は今週木曜のMXテレビ「5時に夢中!」17時〜)
日本のグラフィックデザインの草分けの一人で
戦後から昨年92歳で亡くなるまで常に第一線で活躍した
早川良雄さんの回顧展。
「女性の顔」をテーマにした作品がよく知られています。
こちらは簡潔で大胆なイラストレーションや、
親しみやすくモダンな感じのレタリングが印象的な作品。

当時誰も見たことがなかったような大胆な構成や、
個性的な色彩など、自由奔放な表現の広告たち。


上方の都会人だった早川さんの作品は
洗練されていながらも、ウィットとユーモアに富んだ
独自の味や風合いが感じられます。

こちらは、男性の顔の極端なアップが、
鮮明な色彩と陰影で描かれていて
強い意志のようなものが伝わってきます。

「広告デザイン」としての洗練された記号性や印象に残るシンプルさ
と、「絵画」としての情感や実在感がミックスされた作風。

こちらは、立体感を取り払い、
たまご型の形と様々な色を塗り重ねることで
女性の複雑な情感を表現した、
シンプルだけど奥深い作品。

感情を表情としてそのまま描くのではなく、
色や形で伝える手法が極められています。
遺作になった昨年の作品も
微笑んでいるようにも見えるし、
哀愁があるようにも見えるもの。

様々な相対的な概念のどれにも見えてきて、
絵ががなりたてることなく、
節度ある涼しげな表情で、静かに迫ってきます。
時代の空気を反映した自由で芸術的な表現の数々を
堪能できる、ロマンチックな回顧展です。
01.28.Thu レベッカ・ホルン展
先日は「ジョナサンでも分かるアート」の取材で
東京都現代美術館で開催中の『レベッカ・ホルン展』へ。
(放送は今週木曜のMXテレビ「5時に夢中!」17時〜)
ドイツ現代アート界を代表する女性アーティストの1人、
レべッカ・ホルンの日本初となる大規模な個展。

若い頃のレベッカ・ホルンが、マスクに鉛筆をつけて
ひたすらドローイングしている映像作品では、
様々な感覚を総動員して物事と関わりたいという欲求で、
「知覚の可能性を広げよう」としている。

鳥の羽根でできた装具を顔につけ、羽根で相手の顔を触る映像では、
「他者とのコミュニケーションを回復する」欲求を表現。
すごく切なくて、エロチック。

「LOVE」と「HATE」という文字が書かれたナイフが
互いに近づき合う、機械仕掛けの作品では
暴力の気配や血の匂いを漂わせながら、
相対する感情が揺れ動く、複雑な心の状態を表現している。

ホルンの機械の情緒的で詩的な動きは、
まるでホルンが黒子になって機械を動かし、
彼女の息づかいが聞こえてくるよう。

「アナーキーのためのコンサート」という作品は、
逆さに吊るされたピアノが、突然轟音で飛び出してくる。
そして、忘れた頃にコミカルな音を響かせ、戻る。
静寂と運動、鋭さともろさ、残酷さとユーモアといった
相反するものが同居していて、
ホルンの内面の緊張感が表れているよう。
彼女のテーマと言える
「知覚の可能性を広げる」ことや
「他者とのコミュニケーションの回復」が
ピアノを通して切実な魂の叫びのように響くことで
観る人の感覚を揺さぶり、
私たちの知覚を広げたり、
自由にするように働きかけてくれる。
などなど、
結構難解だけど、訴えるものはとてもシンプルです。
ザ・現代アート。
01.27.Wed 歌舞伎座さよなら公演「壽初春大歌舞伎」
先日は先輩に誘って頂いて
1月の歌舞伎座さよなら公演へ。

小劇場演劇が好きでよく観に行くが、
僕は本や演出を観るタイプ。
あまり役者で選ぶ方ではない。
でも歌舞伎は、最初に観た時に
理解しようと頭でっかちになってしまい、
思ったほど楽しめなかったので、
自分流に観方を変えた。
それは、お話に関してはあまり深く考えず、
「風情」と「華」を観ること。
「風情」というのは、
太鼓や笛、琴の音などで彩られる和のお祭りの雰囲気、
あの日本人のDNAに訴えかける高揚感みたいなものを
楽しむように歌舞伎を観ること。
そうすると体感する気分になれるし、
演出の粋にも意識的になるし、
昔の日本へタイムスリップして舞台を観ているような
気持ちになれるから、素直に楽しめる。
そして「華」というのは、役者の華。
普通の芝居は演技が自然なことがうまいとされるけど、
歌舞伎の場合はもしそうなら、見得を切ったりしない。
ミュージカルみたいな要素もあるので、
わざとらしい演技をどう面白く見せるかがポイントになる。
しかも基本的にはセリフを変えて面白くするわけではないので、
結局、役者としてというか人間としての
魅力、オーラ、華みたいなものが大事になってくる。
だから歌舞伎を楽しむなら「役者(の演技)を観る」という要素が
必然的に強くなった。
だからこそ、同じ台本を長年に渡って上演したり、
客も知っている話をまた観に行くみたいなことが多いんだなぁと。
そういう目で観ると、
今回の勘三郎、染五郎などはやはり「華」がある。
あれは血筋のせいなのか?だから世襲制なのか?
よく分からないが凄い。
そして前回観に行った時の海老蔵は
めちゃめちゃ凄かった。
人間としての色気みたいなものに溢れていた。
あれはモテるはずだ。
01.21.Thu 天明屋尚 展 「風流」
先日は「ジョナサンでも分かるアート」の取材で
市ヶ谷「ミヅマアートギャラリー」で開催中の
『天明屋尚展「風流」』へ。
(放送は今週木曜のMXテレビ「5時に夢中!」17時〜)
現代アート界の傾奇者、天明屋尚さんの個展。
天明屋さんは、日本伝統絵画のエッセンスを引用しつつ、
アウトローの美学で現代を表現する、
自称「ネオ日本画」を発表しています。
個展タイトルの「風流(ふりゅう)」は
日本伝統の華やかで絢爛豪華な装飾美で、
「侘び・寂び」とは正反対の美意識。
それは「アウトローの美学」とも通じていて、
室町時代には「婆娑羅」「傾奇者」と呼ばれた
織田信長に代表される
派手好きで暴れん坊、文化的素養が高くて反権力的な
いわゆるクールな武士や大名たちがいたし、
「歌舞伎」も反体制な傾奇者たちが作り上げた文化。
現代でも絢爛豪華なアウトロー文化は、
刺青やデコトラ、特攻服などに受け継がれています。
「五輪画(火)(風)(空)(水)(地) 」

こちらは宮本武蔵が書いた兵法書「五輪の書」に
アイデアを得たという5枚組の作品。
ふんどし、刺青、オールバックで、ポーズもバッチリ決まった
男の中の男から様々なオーラがほとばしっています。
今までほとんど意識したことなかったけど、
刺青は、死んでしまえば消滅する装飾美。
日本伝統の刺青には、現世をきらびやかに生き、
速やかに潔く死んでいくという「散る美学」があります。
掛け軸なのに変な形なのも、
伝統を生かしながらもそれにとらわれない
天明屋独自の装飾美。
こちらは「思念遊戯」

2人の男の想念が闘気のように現れて闘っている作品。
研ぎ澄まされた美意識と
伝統が絶妙に混ざり合っています。
作者はタコとコウモリの解釈は観た人に委ねますとのことでしたが、
個人的には、
中国で福を招く象徴とされ、
その影響で昔は日本でもそう見られていたコウモリに対して、
タコは体の色を変えたり、足がとれても生え替わるといった
変化の象徴なので、
「伝統や風習」のシンボルであるコウモリに対しての
「新たな価値観を提言する変化」のシンボルであるタコ
とのせめぎ合いであり、
世界や美術界に対しての天明屋さんの取り組み
とダブるような世界観を感じました。
01.18.Mon ノー・マンズ・ランド@フランス大使館
先日は広尾でプライベートなアート散歩。
今、解体前のフランス大使館旧庁舎で、
最初で最後の一般公開が行われています。

しかも、壊すからということで、各部屋を自由に使って
アーティスト達の作品が創作・展示され、
入場は無料という大盤振る舞い。
フランス文化の懐の深さを感じますねぇ。
タイトルは「NO MAN’S LAND」。
様々な国のアーティスト達が作品を発表し、
「領域」の概念に想いを馳せるこのイベントは、
アートも建築も楽しめるけど、
何より、そこに流れる自由な空気こそが
一番の見どころというか、感じどころ。



フランス大使館って解体されるだけあって
こんなにボロいんだ!っていう感想も
現地に行ってこそ分かる醍醐味です。


